いかした愛の放浪者

vozrecords2008-04-21

 中三の頃、理由は忘れてしまったが、無性に学校に行きたくない時期があった。幸か不幸か「引きこもる」という概念を思いつかなかったので、欠席することはなかったが、けっこう苦痛だった。そんな頃、突然ラジオで聴いて夢中になったのがニック・ロウ「Cruel To Be Kind(恋するふたり)」。イントロ〜間奏〜エンディンどれをとっても文句のつけようのない、僕にとっての”完璧なポップ・ソング”が目の前に現れた感じだった。それからは学校に行く前にこの曲を聴くという儀式を一ヶ月は続けたと思う。そうこうしていくうちに不思議と苦痛は去った。年をとってくると、さすがに音楽がそこまで自分に"効く”ことはないけど、いまだにぱっとしない気分のときにこの曲を聴く。聴く前よりは間違いなくちょっと気分は軽くなる。
 さて、その「恋するふたり」の入ったアルバム「LABOUR OF LUST(邦題:いかした愛の放浪者。意味わかんないけどけっこう好きなタイトルだ)」は今廃盤のようだ。残念。ちなみに「LABOUR OF LUST」というのは「LABOUR OF LOVE」という言い回しをもじったものらしい。「LABOUR OF LOVE」は儲けにもならないけど好きだからやる(なんか身にしみる、、、)、ということで、そのLOVEをLUST(欲)に変えている。なんか、いかにも英国人らしいひねり方だなあ。
 彼のライヴはずいぶん昔に一度見たことがある。1988年だからちょうど20年(!)前だ。会場は九段会館。ステージには彼一人。彼の周りにギターが数本あって、曲ごとに持ち替えながら、軽快なロックンロールを歌い続けていた。もちろんこの曲もやった。至福の瞬間だった。
 YouTubeでビデオクリップを約30年目にして初めて見た。2007年の枯れた「恋するふたり」もあった。雰囲気が一番良かったのがこのTV番組のヴァージョンかなあ。