ロジャー・ニコルス

vozrecords2008-01-10

ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」というアルバムが発売されて、今年で40年になる。僕が初めて聴いたのが1987年頃、20年近く前だ。ソニーミュージックに入社した時に、ポニーキャニオン(当時A&Mのカタログはポニーキャニオンが扱っていた)に仲の良い知り合いが出来て、当時日本でのみCD化されたこのアルバムのことを教えてもらったのだ。ポニーキャニオンのどこかの部屋で数曲聴かせてもらってたちまち夢中になり、すぐにCDショップに買いに行ったことを覚えている。90年代になると小西康陽さんたちが中心になりこのアルバムの存在が広まっていき、いわゆる「渋谷系」のバイブルのようになった。そのムーヴメントの中では、サージェントペパーズやペットサウンズより重要ですらあったような印象がある。
 何年か後になって僕はこのアルバムのLPを、しかもシールド(未開封でビニールコーティングされているもの)の状態で買うことが出来て、保管しておこうかとも思ったんだけど、コレクターではないからと思い直して、おそるおそるビニールをゆっくりはがして、1968年に仮想タイムトリップしたつもりになって、一度だけ通して聴いた。
 さて、今日久しぶりに渋谷のタワーレコードに行ったら(音楽業界にいるくせに”久しぶり”というのは大問題だと思うけど、CDショップに行くとあまりに情報が多すぎてちょっとしたパニックになってしまうので、なにか買う目的がある時だけ行くようにしている)彼らの「40年ぶりの新譜」がディスプレイされていた。本国で作品を発表する機会を得られない良質なアーティストのCDをリリースするのが、日本の音楽業界の最たる美点のひとつだと思うが、内容的に少しがっかりするものも少なくなかった。ロジャー・ニコルスの場合も十数年前に出た「Be Gentle With My Heart」が、個人的にはいまひとつだったので、半信半疑なまま試聴してみた、、、。そして即、レジへ。うーん、まいった。心の長い間ふれられてこなかった部分を、さーっとやわらかい波が洗っていくような感覚。「渋谷系」を経験した人もしなかった人も、やさしく切ない”本物のメロディー”を聴きたかったら是非。