馬場俊英 ETV特集「生きづらい時代の大人たちへ」

 昨晩、NHKの教育テレビのETV特集を見た。シンガーソングライターの馬場俊英さんを紹介しながら、彼の歌に励まされる中高年層の再出発にかける姿を織り込んでいく内容で、僕はそこで紹介された人たちとまったく同世代でもあるのですごく興味深かった。
 馬場俊英さんはうちの奥さんが4〜5年前に「鴨川」という曲が良いから聴いてみろと薦められてはじめて聴いた。その後、僕が矢舟テツローの「ダウンビート」というアルバムをプロデュースすることになった時、矢舟と馬場さんが交流があって(そのあたりは是非矢舟のブログで)、レコーディングに2曲参加してもらった。そのなかで「濃いコーヒーを」という曲があって、馬場さんもすごく気に入っていたようでギターとハモリをやってもらった。馬場さんの持つ雰囲気が、この曲に独特のあたたかみをもたらしてくれていて、もっとたくさんの人に是非聴いてもらいたいなあと願ってる。(僕のレーベルの作品じゃないけれど)
 話を戻して、昨日の番組を見て思ったこと。まず、一度レコード会社の契約を切られ、自分でインディー盤を作り自ら営業をやりながら、自力でファンを増やしていき、40歳近くなって再びメジャ−に戻ってくる(しかも同じレコード会社だ)という、今の音楽シーンでは、奇跡的なことをやりとげた馬場さんへの敬意だ。大量生産、大量消費が当然の音楽業界に対する、ひとつの「揺り戻し」とも考えられるが、やはり誰にでもできることではないだろう。でも少なくとも、袋小路にいる人にとっての突破口は「信じて継続すること」以外ないという希望を与えてくれる。
 それから、彼らのファンとして紹介される人たち。それぞれ、家庭や仕事に深刻な(本当に深刻な)問題をかかえていて、真剣に彼の歌に聴き入っている。年齢的にももう流行の音楽情報をコマめにチェックしているような人たちではないが、僕を含めたこの年代の多くは、十代の頃音楽を聴きながら励まされたりした経験が間違いなく刷り込まれている。そして、そういう人たちにきちんと音楽が発信されていなかったんだなあ(本当は必要とされているのに)、とつくづく思った。