夏のポップス〜ブライアン・ウイルソン

vozrecords2007-08-11

 ブライアン・ウィルソンという人は、ある種の"わびさび"の感覚というか、人生のはかなさのようなものに対する感受性を、人間の許容量以上に背負わされた人なんじゃないかと思う。

 仕事に向かうバスの窓から夏空を見上げながら彼の歌を聴いていると、自分がこうしているなにげない時間もつかの間のものだし、単純なことを反復させながら永遠に続いていきそうに思えるこの人生もやがて終わるということに突然気づく。誰かが遠い場所からテレパシーをおくってきたかのように。だからといって悲しくなったり、落ち込んでしまうわけでもなく、間違いのない事実として感じるだけだ。ただ、それまであたりをふわふわ漂っていた空気が突然胸の奥に入り込んできて、ちいさなかたまりになってきゅっと収縮するような感覚にとらわれる。そして、ちょっと気持ちを整えるために深めに呼吸をして、また音楽に戻っていく。

 ただ、音楽を聴いているだけなのに、こんな反応を喚起させてくれる人は他にはちょっといない。ただ、作品として客観的に人生のはかなさを描いているのではなく、この人は宿命として体全体で常にそれを受け止めているのだと確信する。

 20代の頃は夏になるとまるでなにかの儀式のようにビーチボーイズを聴いていたものだが、気がつくとかなり長い間聴かなくなっていた。突然最近ある曲のメロディーが浮かんできて聴きたくなってCDを探した。「サーファー・ガール」というアルバムに入っている「Your Summer Dream」という曲だ。