梅雨〜エリオット・マーフィー

vozrecords2007-07-12

 梅雨だ。雨の歌ならそれこそ雨粒の数ほど(そんなにはないか、、)ありそうだけど、梅雨、雨期となると、そう思い浮かばない。少なくとも僕のCD棚にあるもので思いつくのは1枚だけ、エリオット・マーフィーのそのものズバリ「RAINY SEASON」というアルバムだ。
 僕は音楽関係の仕事を気づくと20年以上やってるけど、考えてみるとロックはほとんど関わっていない(特にこの10年)。じゃあ、全然聴かないかというとそうでもなくて、10代の頃はかなり良く聴いた。その頃(70年代後半〜80年代)、ブルース・スプリングスティーンを中心に都会で生きる若者の物語を歌うアーティスト(ストリート・ロッカーと呼ばれていた)が出てきたんだけど、エリオット・マーフィーもそんな代表的なひとりだ。当時は、正直、スプリングスティーンを聴いた時に感じるような高揚感を感じなくてアルバムを買っても2回くらいしか聴かなかったと思う。実際彼は今日までヒット作を1枚も作っていない。僕もまた聴くようになったのも去年くらいで、何か突然気になりはじめて、聴いていなかった初期のものや最近のものなどをあらためて買って聴いている。
 デビュー当時の彼は、ボブ・ディラン的なフォーク・ロックスタイルにのって、敬愛する作家スコット・フィッツジェラルド村上春樹氏訳「グレート・ギャツビー」で知名度がぐっとあがったはず)の華やかだが儚い世界を再現しようと試みていて、十代の頃はまったく理解できなかったが、今になって聴くとじわじわと伝わってくる。やっぱり、年とって、たくさん音楽聴いてやっとわかるようになるものもあるんだなあ、とつくづく思う。若い頃ピンとこなかったけど、なんとなく頭にひっかかっているアーティストがいたら、是非聴いてみた方がいいと思う。
 それで、この「RAINY SEASON」だけど、実は「RAINY SEASON」という曲は入っていない。アルバム最後の長い曲「PUT IT DOWN」の最後の最後に「It's the rainy season of my memory」と出てきて、”思い出が雨のように次々とこぼれおちてくる季節”なのか実際に雨が降っていてそれに誘発されていろいろフラッシュバックされてくるのかどちらとも解釈できなくもないが、とても象徴的に使われている。梅雨の時こそ、無理にテンションをあげようとせずに、こういうちょっと地味めなアルバムを聴くのもいいと思う。