ピアノマン〜フランク・ウェーバー

vozrecords2007-06-15

 先日の披露宴で歌う陣内智則をTVで見ながら、男のピアノ弾き語りへの憧れは今も変わらずあるんだなあ、と思ったんだけど、ピアノを弾ける男性に対する同性の感情というのは、他の楽器とちょっと違ったニュアンスがあるように思う。羨望に微妙に妬みがブレンドされているというか。もしエルトン・ジョンビリー・ジョエルが長身の美男子だったら、女性ファンは増えるだろうけど、同性は相当ひいてしまうはずだ。まあ、容姿が変われば、まわりの人たちとの関係で培われる自意識も変わってくるし、したがって当然音楽性も変わるだろうから、そんなこと想像してもしかたないけど。
 それはいいとして、先日、これからはさまざまなピアノマンを楽しめる時代になってほしい、みたいなことを書いたけど、実は僕はあまり知られていないピアノマンのLPやCDをけっこう持っている。そんな中でも、今でも好きなものが何枚かあって、その代表がFrank Weberの「AS THE TIME FLIES」というアルバムだ。少し前まで国内盤のCDも出ていたのだが廃盤になってしまったらしい。78年という時代からしても、明らかにポスト・ビリー・ジョエルを狙ったものだ。だが、ミュージシャンにリチャード・ティー、ウィル・リー、スティーヴ・ガッドなどこの時代最高のメンバーが揃い(コーラスにはルーサー・ヴァンドロス)、本当にクオリティーの高い作品だ。1曲目の「'71」は昔大ヒットしたクリスファー・クロスの「ニューヨークシティー・セレナーデ」はこれを参考にしたんじゃないかと疑いたくなるほどの、良いバラードで、この曲だけでももうちょっと多くの人に聴いてもらう価値があると思う。他の収録曲にはナット・キング・コールの「STRAIGHTEN UP AND FLY RIGHT」(矢舟テツローも時々ライヴでやってる)なんかもある。全体的に聴くといわゆる”商業的な色気"みたいなものが、すっぱりと欠けてしまっている。だけどそのおかげでこうして僕が飽きることなく何度も聴けるものになっているのも確かだ。
 彼をはじめとして僕の持っているそうしたアルバムには、きれいなメロディーとロマンティックなムードが色濃くあり、みんなやさしくジェントルだ。こうした音楽は決してなくなってほしくないし、なくならないと思うが、今のインターネットのフォーマットと今のところぴったりとフィットしていない気がする。ただ、その音楽を知ってもらうチャンスが世界にくまなく広がっていることはポジティヴにとらえたい。